D&O保険コラムcolumn

2024.5.22 取締役の責任

取締役の損害賠償責任とは?取締役の2大責任と取締役の種類を解説

取締役の損害賠償責任とは?取締役の2大責任と取締役の種類を解説


取締役とは

取締役は、株式会社の業務執行の決定機関である取締役会の一員であり、会社の業務執行権限を持つ経営陣の一員です。
会社と労働契約を結び雇用されている従業員とは異なり、取締役は会社(実質的には株主)から、経営を委任され経営者として会社運営を進めていくことになると、会社法330条で定義づけされています。

取締役の2大責任 その① 「善管注意義務」

経営を委任されている取締役は、単なる従業員とは決定的に異なる法的責任として「善管注意義務」を負っています。
「善管注意義務(民法644条)」とは、社会通念上あるいは客観的に見て委任された人の職業や社会的地位などから当然要求される注意を払う義務のことで、委任者は誠実職務を遂行し、注意義務を尽くさなければならないとされています。
つまり取締役は、会社法330条で会社から経営を委任されている立場のため、経営者として誠実に職務を遂行し、注意義務を尽くさなければならないという責任を負っているのです。

取締役の2大責任 その② 「損害賠償責任」

取締役が従業員と異なる2大責任のもうひとつが、損害賠償責任です。
取締役は善管注意義務について「違反」がある場合、会社に対し個人として「損害賠償責任」を負うことになります。
ここでいう「違反」は、「善管注意義務を怠ってしまったことで、会社に何らかの損害が生じてしまったた場合」ということになります。
ただし、同じ取締役役員という立場でも、「代表取締役」と「執行に関与する取締役」「執行に関与しない取締役」では、それぞれ善管注意義務の範囲が異なります。

業務執行権による違い

「執行しない取締役」の責任は2つ

社外取締役などの「執行に関与しない取締役」の義務は、2つあります。
1つは、取締役会の場で審議事項・報告事項を吟味し、検討する義務です。
審議事項について、適法であるか、リスクはなく経営的価値はあるか等、社会的に是認されるかといった多角的な視点で検討し、報告事項についても同様に注意深くチェックする点です。
2つ目は、経営トップに対する監督義務です。
前述の審議・報告事項のほか、代表取締役の業務執行を監視し、取締役会を通じて業務執行が適正に行われるようにする義務があります。

「執行する取締役」の責任は?

業務執行取締役や執行役兼務取締役など「執行に関与する取締役」は、前述の「執行に関与しない取締役」と同じ義務を負っていますが、それ以外の義務も負っています。
執行担当者として負っている職責上の注意義務と、担当業務から得られる情報に対応するための注意義務が加わるのです。

代表取締役の責任範囲

代表取締役は他の取締役とは異なり、さらに範囲が広がり、「代表業務」という業務を執行する取締役のため、その権限は全社へわたります。
代表取締役は他の業務執行取締役・使用人兼務取締役から上がってくる報告に基づき、全社的な状況把握、方針の決断、具体的対応策を命じ監督する職務を負っているため、大規模な会社では「社長」という肩書にし、社長が総合的な情報把握や対応を行い、各事業部門は他の業務執行取締役ではる「副社長」「専務」「常務」や、部門ごとの使用人兼務取締役らに委ねその、担当取締役らが適正に執行をしているとい前提に、注意義務を果たすことが許されます。

取締役の損害賠償責任とは

取締役が「善管注意義務」に違反する行為をしてしまい、会社に損害が生じた時に賠償する責任が生じます。
会社法423条1項では、「取締役はその任務を怠ったときには、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定されています。
この「任務を怠ったとき」を法律用語では「任務懈怠」といいますが、任務懈怠とされるのはその行為が取締役として、「故意」または「過失」により、善管注意義務に違反した場合に賠償責任が発生します。
こうした取締役の賠償責任に備えるため、「会社役員賠償責任保険(D&O保険)」があります。

取締役個人に数億円の負担

前章で、取締役の職務の任務懈怠は、「故意」でも「過失」でも賠償責任に発展する可能性があると記載しましたが、昨今の訴訟では役員個人や家族に対し、数億円に及ぶ損害賠償請求の支払い命令が出ることも珍しくありません。
敗訴した場合の賠償金や和解金だけではなく、勝訴した場合も高額な弁護士費用を取締役個人が負担しなければなりません。

ともすれば、法令違反や責任リスクを過度に恐れ、本来の取締役の職務や経営自体が委縮してしまう可能性があります。このような不必要な委縮を防ぐために「D&O保険」があります。

D&O保険(会社役員賠償責任保険)でリスクの軽減を

D&O保険は、取締役の損害賠償金(判決において支払いを命じられた損害賠償金、和解金等)と訴訟費用(弁護士に支払う着手金や報酬金等)が補償され、訴訟が敗訴となった場合でも補償されます。
(ただし、取締役自身が私的な便宜のためや、違法な犯罪行為などを認識しながら行った場合は、補償の対象外です)
取締役のリスクを軽減させ、健全な経営を行うために、D&O保険(会社役員賠償責任保険)の備えをおすすめいたします。

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参考文書:中島茂「取締役の法律知識」2P~12P、P166~175P
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