D&O保険コラムcolumn

2025.7.24 取締役の責任

経営者が直面する訴訟の種類とは?損害賠償・自己破産を防ぐD&O保険のポイント

経営者は常に、株主・従業員・外部の第三者などから訴訟を提起されるリスクに晒されています。損害賠償責任が思いがけず高額になるケースもあるため、D&O保険などによって適切に備えておきましょう。
本記事では、経営者が直面する訴訟リスクの種類や、経営者が訴訟リスクに備える方法などを解説します。
会社の規模が拡大してきて、訴訟リスクが気になり始めた経営者の方は、本記事を参考にしてください。

経営者が直面する訴訟の種類とは?損害賠償・自己破産を防ぐD&O保険のポイント

1. 経営者が巻き込まれる訴訟の主なパターン

会社の経営に関して、経営者が巻き込まれる可能性がある訴訟のパターンとしては、主に以下の4つが挙げられます。
① 株主代表訴訟
② 従業員が提起する損害賠償請求訴訟
③ 外部の第三者が提起する損害賠償請求訴訟
④ 刑事訴訟

1-1. 株主代表訴訟

株主代表訴訟は、経営者を含む役員等の任務懈怠責任などを追及するために、株主が提起する訴訟です(会社法847条)。

経営者は、株主代表訴訟によって以下に挙げるような責任を追及されることがあります。
(a)経営判断のミス
(b)法令の不遵守
(c)横領・背任

1-1-1. 経営判断のミス

経営判断に失敗し、会社に損害を与えた経営者は、会社に対して任務懈怠責任を負う可能性があります(会社法423条1項)。株価の下落などの損害を被った株主は、経営者の責任を追及するために株主代表訴訟を提起するかもしれません。

ただし、経営判断のミスによる損害について厳しすぎる賠償責任を課すと、経営者は適切なリスクテイクができなくなってしまいます。
そのため、最高裁判例によって「経営判断の原則」が確立しています(最高裁平成22年7月15日判決)。経営判断のミスについて経営者が任務懈怠責任を負うのは、経営者の判断として著しく不合理である場合のみです。

1-1-2. 法令の不遵守

会社が遵守すべき法令を遵守しないと、行政処分や刑事罰を受けるおそれがあります。また、法令違反の事実が大々的に報道されると、会社の社会的評価が失墜し、売上の低下などを招くケースが少なくありません。

法令の不遵守によって会社に損害が生じた場合、経営者はその損害について任務懈怠責任を負う可能性があります。株主は経営者の責任を追及するため、株主代表訴訟を提起するかもしれません。 経営判断のミスとは異なり、法令の不遵守については「経営判断の原則」が適用されません。そのため、経営者の善管注意義務違反が認められ、損害賠償を強いられるリスクが高いと考えられます。

1-1-3. 横領・背任

経営者自身が会社の資金を横領したり、その任務に背いて会社に損害を与えたりした場合は、その責任を追及されることは避けられないでしょう。株主代表訴訟が提起される可能性も高いと考えられます。
また、横領や背任をした経営者は、刑事訴追されるケースが多いことにも注意が必要です。

1-2. 従業員が提起する損害賠償請求訴訟

従業員が経営者から不適切な行為をされたとして、会社とともに経営者の責任を追及する損害賠償請求訴訟を提起するケースがあります。

従業員による損害賠償請求の原因となる行為としては、以下の例が挙げられます。
(a)違法な残業や長時間労働の指示
(b)ハラスメント

1-2-1. 違法な残業や長時間労働の指示

従業員の労働時間については、労働基準法によって厳格なルールが設けられています。主なルールの概要は、以下のとおりです。
・36協定(労使協定)を締結しなければ、時間外労働や休日労働をさせることができない。
・36協定を締結した場合でも、時間外労働や休日労働の時間数は、36協定および労働基準法で定められた上限の範囲内に収めなければならない。
・時間外労働、休日労働または深夜労働をした労働者には、労働基準法所定の割増率以上の割増賃金を支払わなければならない。
など

経営者が違法な残業や長時間労働を指示していたり、別の者が指示しているのを見過ごしたりした場合には、従業員から損害賠償を請求されるおそれがあります。
従業員との和解交渉が決裂すると、最終的には訴訟に発展し得るので注意が必要です。

1-2-2. ハラスメント

近年では、さまざまな種類のハラスメントが問題視されています。
職場において問題になり得る主なハラスメントとしては、以下の例が挙げられます。

職場におけるハラスメントの主な種類 概要
セクシュアル・ハラスメント(セクハラ) 性的な言動に否定的な反応を示した労働者に不利益を与えること、または性的な言動によって労働者の就業環境を害すること
パワー・ハラスメント(パワハラ) 優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境を害すること
マタニティ・ハラスメント(マタハラ) 妊娠・出産・育児に関する言動によって、女性労働者の就業環境を害すること
パタニティ・ハラスメント(パタハラ) 育児に関する言動によって、男性労働者の就業環境を害すること
経営者自身が、労働者に対して上記のハラスメントに当たる言動をすると、従業員から損害賠償を請求されるおそれがあります。和解交渉がまとまらなければ、訴訟を提起される可能性が高いです。

1-3. 外部の第三者が提起する損害賠償請求訴訟

株式会社の役員等が、その職務によって第三者に損害を与えたときは、悪意または重大な過失があった場合に限り、その損害を賠償する責任を負います(会社法429条1項)。

経営者は、一例として以下のような理由により、外部の第三者から損害賠償請求訴訟を提起されることがあります。
(a)取引先との契約トラブル
(b)情報漏洩
(c)製造物責任

1-3-1. 取引先との契約トラブル

会社が取引先との契約に違反した場合、会社は取引先に生じた損害を賠償しなければなりません。
経営者自身も、契約違反行為について悪意または重大な過失があることを理由に、会社とともに損害賠償責任を追及されるおそれがあります。

1-3-2. 情報漏洩

会社が管理している個人情報や営業秘密が漏洩すると、顧客や取引先に重大な損害を与えるケースがあります。
情報漏洩についても、経営者に悪意または重大な過失があることを指摘され、会社とともに損害賠償請求を受ける可能性があるので注意が必要です。

1-3-3. 製造物責任

会社が製造した製品の欠陥が原因で、利用者の生命・身体・財産に損害が生じた場合には、会社がその損害を賠償しなければなりません(製造物責任法3条)。
製造物責任についても、悪意または重大な過失があることとして、経営者が会社とともに損害賠償を請求されるケースがあります。

1-4. 刑事訴訟

経営者が横領・背任・粉飾決算・インサイダー取引などの犯罪行為をした場合は、刑事訴訟にかけられる可能性があります。
刑事訴訟で有罪判決を受けた場合は、刑務所に収監されたり、罰金を科されたりすることになります。

経営者が訴訟について負うリスクやコストの大きさは?

経営者が被告となる訴訟のうち、特に任務懈怠責任を追及する株主代表訴訟では、認められる損害賠償が高額になりがちです。
事案の内容によっては、数十億円から数百億円の損害賠償を命じられるケースもあります。

しかも、この株主代表訴訟は、原告である株主がいくら高額の損害賠償を請求する場合でも、裁判所に納める手数料は一律1万3,000円に過ぎません。
ごく少額の負担で訴訟を提起できる一方で、経営者側には巨額の賠償リスクが生じるというアンバランスな構造に注意が必要です。

仮に原告側の請求が不合理であっても、訴訟対応を弁護士に依頼する場合は、弁護士費用がかかります。
弁護士費用の額は請求額によって決まるのが一般的なので、高額の請求を受けている場合には、弁護士費用もかなり高額になってしまいます。

経営者としては、訴訟によって高額の損害賠償を命じられるリスクや、高額の弁護士費用がかかってしまうリスクについて、あらかじめ備えておくことが望ましいです。

経営者が敗訴し、損害賠償を支払えないとどうなる?

経営者が訴訟で命じられた損害賠償を支払えないと、最終的には自己破産せざるを得ません。
自己破産をすると、取締役の退任やクレジットカードの強制解約などの不利益を被ります。
また、自己破産をしても損害賠償責任が免責されないケースがある点に注意が必要です。

3-1. 最終的には自己破産せざるを得ない

手元にあるほとんどの財産を売却して支払いに充てても、なお損害賠償を支払えないときは、自己破産が唯一の解決策となります。
自己破産の手続きでは、財産が処分された後、最終的に残った債務が免責されます。
損害賠償債務も、一部の例外を除いて免責の対象です。

3-2. 自己破産によって生じる不利益の例

自己破産をすると、債務が免責される代わりに、以下のような不利益が生じてしまいます。
(a)会社との委任契約が終了し、取締役を退任することになる(再就任は可能)

(b)家や車などの財産が処分される

(c)個人信用情報機関に異動情報が登録され、以下のことができなくなる
・金融機関からの借入れ
・クレジットカードの利用
・商品の分割払い購入
・債務の保証
・保証会社による保証が必要な物件の賃借
など

3-3. 自己破産をしても、損害賠償責任が免責されないことがある

自己破産をしても、以下のいずれかに該当する場合には、損害賠償責任の免責が認められません(破産法253条1項2号、3号)。
(a)破産者が悪意で加えた不法行為に基づく場合
(例)横領、背任

(b)破産者が故意または重大な過失により加えた、人の生命または身体を害する不法行為に基づく場合
(例)製品の欠陥による死亡、傷害(故意または重大な過失がある場合に限る)
免責が認められない場合は、破産手続きの終了後に損害賠償を支払わなければなりません。

4. 経営者が訴訟のリスクに備える方法

経営者が訴訟のリスクに備える方法としては、以下の例が挙げられます。
①会社と責任限定契約を締結する
②会社と補償契約を締結する
③会社がD&O保険に加入する

※いずれも、刑事訴訟のリスクに備えることはできません。

4-1. 会社と責任限定契約を締結する

「責任限定契約」とは、業務執行取締役以外の役員(=非業務執行取締役等)について、会社に対する任務懈怠責任を一定額までに限定する契約です。
定款に定めがある場合に限り、非業務執行取締役は会社との間で責任限定契約を締結できます。
責任限定契約を締結した場合、非業務執行取締役等が善意でかつ重大な過失がないときは、会社に対する任務懈怠責任による賠償額のうち、定款で定められた金額を超える部分が免除されます(会社法427条1項)。
ただし少なくとも、役職に応じた最低責任限度額は支払わなければなりません。また、自己のために会社と取引をしたことによる取締役の任務懈怠責任は、責任限定契約による免除が認められません(会社法428条)。
なお、業務執行取締役は責任限定契約を締結できません。

4-2. 会社と補償契約を締結する

「補償契約」とは、役員の第三者に対する損害賠償責任等を会社が補償する契約です(会社法430条の2)。株主総会決議(取締役会設置会社では、取締役会決議)で承認されれば、経営者は会社との間で補償契約を締結できます。
補償契約を締結した場合、その定めに従って、会社が役員の第三者に対する損害賠償責任等を補償します。通常の弁護士費用も、補償の範囲に含めることができます。
ただし、役員自身の会社に対する任務懈怠責任や、役員の悪意または重大な過失による損害賠償責任は補償されません。

4-3. 会社がD&O保険に加入する

「D&O保険(会社役員賠償責任保険)」とは、役員の会社に対する任務懈怠責任や、第三者に対する損害賠償責任をカバーするため、会社が加入する保険です。
株主総会決議(取締役会設置会社では、取締役会決議)によって内容を決定したうえで、会社はD&O保険に加入することができます。

D&O保険は、役員の訴訟リスクを幅広くカバーするものです。損害賠償責任のほか、弁護士費用も補償されることがあります。
保険金が支払われるので、会社の資金を用いて補償する必要がなくなるのが大きなメリットと言えます。

5. D&O保険に加入する際のチェックポイント

訴訟リスクに備えて会社がD&O保険に加入する場合は、保険約款の記載などを参照し、主に以下のポイントを確認しましょう。
①支払限度額
②弁護士費用の補償の有無
③免責事項

5-1. 支払限度額

D&O保険によってカバーされる損害賠償責任は、支払限度額までに限られます。支払限度額が高ければ高いほど、支払う保険料は高額となります。
経営者が負う損害賠償責任は、思いがけず高額となる可能性があります。できる限り余裕を持たせた支払限度額を設定しましょう。

5-2. 弁護士費用の補償の有無

経営者が高額の損害賠償請求を受けた場合は、弁護士費用も高額になります。そのため、D&O保険は弁護士費用も補償されるものを選ぶことが望ましいです。

5-3. 免責事項

D&O保険の約款では、免責事項が定められています。免責事項に該当する場合は、保険金が支払われません。

D&O保険の主な免責事項は、以下のとおりです。
どのような行為が補償対象外となるのか、加入前にあらかじめ確認しておきましょう。
・犯罪行為
・違法に私的な利益を得る行為
・法令違反であることを認識しながら行った行為
・違法な役員報酬の支払い
・インサイダー取引
・賄賂の供与
・保険期間の開始日より前から発生していたトラブル
・環境汚染
・身体の障害、精神的苦痛
・財物の滅失、破損、汚損、紛失、盗難
・誹謗中傷
など

6. まとめ

経営者はさまざまな訴訟のリスクに晒されており、思いがけず高額の損害賠償を命じられるケースもあります。
経営者が訴訟のリスクに備えるためには、幅広い損害賠償責任を補償する「D&O保険」が最適です。
補償の内容をよく確認して、自社のニーズに合ったD&O保険を選びましょう。

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阿部 由羅
著・監修
阿部 由羅(あべ ゆら)
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。
https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw


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